ののじのめもも

在宅アニソンDJによる修行録

ビートマッチ その2

こんにちは、ののじです。引き続きビートマッチです。前回書いた通りビートマッチは拍を合わせることです。ですが、これに関連してもうちょっとだけ覚えてほしいことがあるんです。お付き合いくださいませ……

ビートマッチだけじゃ足りない?

単純な手拍子であれば、どのタイミングでビートマッチをしたとしても大丈夫でしょう。しかしこれが曲だとそうはいきません。確かにビートマッチしているけど違和感があるということがありえます。

なぜそんなことが起こるのか。そこで関係してくるのが「拍子」と「小節」です。

拍子と小節

手拍子に無くて曲にあるもの、それが「拍子」です。拍子とは簡単に言うと1つのまとまりにする拍数のことです。4拍子であれば4拍で1つ、3拍子であれば3拍で1つのまとまりって感じですね。

で、その1つのまとまりが「小節」です。細かい定義は違いますが、とりあえずそう理解しておいて下さい。曲はこの小節がずらーっと繋がっていく形で構成されています。

言葉にすると分かりにくいのですが、非常に簡単なことです。一般的な西洋音楽の大多数は4拍子なので、何か好きな曲をかけて「1、2、3、4、1、2……」って感じでカウントしてみて下さい。その1~4が1つのまとまり、つまり1小節です。

ちなみにどこが1になるかについては非常に説明し辛いです…… なんせ曲によってバラバラなので。基本的にはバスドラムの最初の1発目だったり、ボーカルが入るタイミングだったりします。でもきっと感覚で簡単に分かると思いますよ。

これは余談ですが、実は手拍子には拍子は無いというのは少し嘘です。というのも、手拍子を打つ時に「強・弱・中・弱」と力具合を変えて繰り返すと4拍子になるからです。「強・弱・弱」なら3拍子です。ずーっと同じ力具合で叩いている場合、拍子は無いと言えますが1拍子とも言えます。

違和感の正体

さてさて、では本題です。ばっちりビートマッチしているのに違和感がある、その原因がまさに拍子と小節にあります。

先に書いたように曲は小節の繰り返しです。つまり4拍子であれば4拍のまとまりの繰り返しです。分かりやすく書くと以下のようになります。カッコは小節、中の数字は小節内の拍です。

曲: [1・2・3・4][1・2・3・4][1・2・3・4][1・2・3・4]……

では曲をもう1曲用意してビートマッチした状態にしてみましょう。

曲A: [1・2・3・4][1・2・3・4][1・2・3・4][1・2・3・4]……  
曲B:  3・4][1・2・3・4][1・2・3・4][1・2・3・4][1・2……

はて。拍の位置 (縦) はバッチリあっていますよね。ですが曲Aの1拍目と曲Bの3拍目、曲Aの4拍目と曲Bの2拍目といった風に対応する小節内の拍がずれています。これが違和感の原因です。解消するためには……もうお分かりですね、小節も合わせればいいんです。

曲A: [1・2・3・4][1・2・3・4][1・2・3・4][1・2・3・4]……  
曲B: [1・2・3・4][1・2・3・4][1・2・3・4][1・2・3・4]……

これで完全に合いました。つまり完璧に違和感なくビートマッチしたい場合、拍だけではなく拍子と小節も合わせる必要があるんです。

またまた余談です。拍と小節はDJ側でテンポを変化させたり停止/再生することで合わせることが出来ますが、拍子は基本的にいじれません。(基本的には、です) なので、拍子の違う曲をミックスするのは違和感の元になります。ダンスミュージックが4拍子を前提に作られているのはこうした理由からなんですよ。

ビートマッチの方法

前回書いたとおり「Sync」で終了です。が、それじゃあんまりなのでもう少し掘り下げてみましょう。

DJ機器の機能 (Sync) に頼る

PCDJの場合、DJコントローラーについているSyncボタンを押すことでビートマッチすることができます。片方の曲をMasterとし、そっちにもう片方の曲を合わせる形になります。これだけあれば何も考えず全部OKと言いたいところですが、残念ながらそうはいきません。

Syncを使ったとしても、人がやらないといけない部分、そもそもSyncでは対応してくれない部分があります。いくつか挙げてみましょう。

  • 拍 (Beat Grid) とテンポの検出が必ずしも正確ではなく調整を要すること
  • 4拍子以外対応しないこと
  • テンポの変化に対応し辛いこと

それでも大体の場合はSyncでなんとかなります。それにアニソンの場合は綺麗に繋ごうと思うと事前準備が必須である都合上、上記欠点から急に使えないことは大した問題ではありません。使えるものはなんでも使っていきましょう!

手動で合わせる

ほぼSyncでいいとは言っても、手動でビートマッチする機会が全くないわけではありません。急に特定の曲を使う必要が出てきた場合は手動以外の選択肢はありませんしね。

その場合、具体的には以下のような操作を行います。

  1. 次の曲をヘッドホンだけで聴けるようにし再生する
  2. 片方の耳でスピーカーから出ている音を、もう片方でヘッドホンの音を聞き、テンポのズレを感じる
  3. 次の曲のテンポを変更する
  4. 次の曲を再生/停止してテンポが合っているか確認する
  5. 3と4を繰り返してテンポを合わせる
  6. 停止状態でMIXするタイミングまで待つ
  7. 拍を合わせて再生しMIXを開始する

つまり先にテンポを合わせて停止しておき、再生を開始するタイミングで拍と小節を合わせるわけです。やろうと思ってすぐに出来るものではありません。要練習です。練習方法については……いずれ書くかも。

まとめ

  1. 完璧なビートマッチのためには拍子と小節の一致も必要
  2. ビートマッチはSync機能でOKだが完璧ではない
  3. 手動でビートマッチする場合、先にテンポを合わせてから最後にその他を合わせる

ビートマッチ その1

こんにちは、ののじです。今回は基本テクニックのビートマッチです。地味に長くなりそうなんで分割します。ビートマッチの説明と必要性についてから始めましょう。

とりあえずコレは知識として絶対に知っておかないといけないレベルです!

ビートマッチって何?

ビートマッチとは読んで字のごとく、かかっている複数の曲のビートをマッチさせることです。と、これだけじゃあまりに分かりにくいですね。

そもそもビートとは

正確な定義はご自身で確認していただくとして、大きくは「リズム」「グルーブ」「拍」といったものです。それぞれ意味が異なりますが、全部「ビート」と表現されることがあります。

で、ここでは単純に「拍」のことだと思ってもらえればOKです。拍は音楽の授業で習った、曲に合わせて手拍子した時のアレですね。ややこしく言うと「リズムの基礎となっている、繰り返される一定間隔」です。あ、これは忘れてもらって大丈夫です。感覚で分かっていれば。

ビートマッチ = 拍を合わせること

ビートは拍のことですから、ビートをマッチ、つまり「拍を合わせること」がビートマッチです。複数の人がそれぞれ別々の曲に合わせて手拍子をした時に全員が同時に手拍子をしている状態、それがビートマッチした状態です。イメージが湧きますかね?

テンポとビートマッチ

ここから少しだけややこしい話になります。ビートとは別で、曲の速さを表す「テンポ」という言葉があります。単位はみなさんご存知のBPM (Beats Per Minute) です。

ビートマッチとは「拍を合わせること」であると書きました。で、実はこの中に「テンポを合わせる」という意味も含まれているのです。「何言ってんだ、コイツ」もしくは「当たり前やろ」って感じですよね、分かります。

先に書いたようにテンポは曲の速さです。全員が同時に手拍子をしている状態の時、当然ながら手拍子の速さは同じです。1回目の手拍子が同時でも速さが違えばだんだんずれていきますからね。ここから、ビートマッチをさらに詳しく言うと「拍を合わせること (必然的にテンポも合う)」となります。

なんでこんな細かいことを書いてるのかっていうと、「ビートマッチは曲の速さ (テンポ) を合わせることでは無い!」と理解して欲しいからです。あくまで合わせるのは「拍」です!

間違って「テンポを合わせること」だと理解してしまうとちょっと困ったことが起こります。例えば以下のような状態はどうでしょう?

  1. AさんはBPM 100で、BさんはBPM 90で手拍子をしている
  2. Bさんは、あるタイミングで手拍子のテンポをBPM 100に変更した

確かにテンポは同じBPM 100になっています。ですが……Bさんがテンポを変更した後、AさんとBさんはずっと同時に手拍子をしているでしょうか?その可能性もありますが、ほぼ確実にずれて手拍子をしているでしょうね。それはなぜか。そう、拍が合っていないからです。

上記の例で拍が偶然に合うのは、Aさんが手拍子をしたその瞬間にBさんがテンポを変更した手拍子の1回目を叩いた場合に限られます。テンポだけを合わせても基本的に拍は合わないんです。ですので「テンポを合わせること」だと理解してしまうと「あれ?ビートマッチしたのになんでずれてんの?」ってことになっちゃうんです。

テンポとビートマッチについてはきっちり覚えておきましょう。まぁこの辺が適当でもどうにでもなりますが、機材の説明書を読む時や他のDJと会話する時に困ることもありますからね。とはいえ、実際にやってみれば体で理解できると思うので大丈夫ですよ。

必要性

必須です!絶対できなきゃダメです!!とは言えません。

理由として主にアニソンDJが使用するPCDJソフトには自動ビートマッチ機能があるからです。機能名としてはどのメーカーでも「Sync」ですね。ボタン一発でビートマッチしてくれます。最近はこの機能に任せきりでもなんとかなっちゃいます。

なので必死に手動でのビートマッチを練習すべきか、と聞かれるならば私はNOと答えます。

それにそもそも繋ぐ時には絶対ビートマッチしないといけないかと言うと、そんなことはありません。するもしないも自由です。ただビートマッチした方が綺麗に繋がるってだけです。

出来るにこしたことはありません。重要度も非常に高い技術です。でも必須ではありません。そんな感じでしょうか。

まとめ

  1. ビートマッチ = 拍を合わせること (必然的にテンポも合う)
  2. ビートマッチ ≠ テンポを合わせること
  3. ビートマッチは基本技術であり重要度も高いが必須とは言えない

アニソンDJって難しい?

こんにちは、ののじです。今回はアニソンDJは難しいものなのか、というところを考えていきたいと思います。

アニソンでDJ、その難易度

難しいか簡単か。シンプルに答えるならば「難しい」が正解だと思います。だけど、考え方によっては「簡単」とも言えるような気がします。

どんなレベル・クオリティのプレイをしたいかで大きく難易度が変わってくる、そういうジャンルです。このあたりは別にアニソンに限った話じゃないんですけど、アニソンは特に顕著ってことです。

「難しい」と「簡単」

やるだけなら簡単

まず「簡単」だとする考え方からいきましょうか。

アニソンDJがメインで活躍する現場といえば当然アニクラ。そのアニクラでは実のところ、それほど技術は求められていないようです。これは単純に需要の問題で、メインのお客さん (ようするにオタク) が最も求めているものは質の良いDJプレイではなく自分の好きな曲が大音量で映像付きで流れることだからです。

需要に応えるだけなら考える必要があるのは選曲だけ。その選曲も今期人気アニメのOPであったりお客さんのコスプレに関連する曲であったりと、オタクならそもそも持っている知識で対応できることが多く、それほど難易度は高くありません。曲が流れるかどうかだけが問題なんで曲順や繋ぎに力を使う必要はないということですね。

つまり最初のハードル自体は無茶苦茶低いわけです。誰でも即日アニソンDJです。とりあえず機材を買って接続の仕方を覚えて曲を用意して並べれば、それでオッケーです。ね、簡単でしょう?

難しいのは?

じゃあ次は「難しい」にいきましょう。

なぜ難しいとも言えるかというと、需要に応えることから一歩進んでDJ自身のこだわりを実現しようとすると急に難易度が高くなっちゃうからなんです。

こだわりとは、例えば「綺麗に次の曲へ繋ぎたい」「繋ぎの部分で軽いマッシュアップを作りたい」「DJプレイでストーリーを作りたい」「フロアのテンションをコントロールしたい」といったようなことですね。難易度が上がる理由をいくつか挙げてみましょう。

  • アニソンは出典ジャンルで中には多彩な音楽ジャンルがあること
  • 歌詞のメッセージ性がすごく強いこと
  • 曲に付随する情報が多いこと (○○アニメのOP、○○のキャラソン等)
  • そもそもDJプレイに配慮された曲ではないこと
  • 1番サビ終わりで次へ繋ぐ文化があるため準備に使える時間が少ないこと
  • お客さんがオタクであること

ジャンルがバラバラで繋ぎにくい曲たちを歌詞と曲の持つ背景を考慮しながら1分半程度で繋ぎ続ける……この時点で如何に難しいかが想像できるんじゃないでしょうか。実際にはここにテンションの上げ下げを含めた全体的な雰囲気作り、そしてお客さんの需要が入り込みます。

曲調も曲の持つ意味も完璧に綺麗に繋ぎ続けるなんて無理ゲーです。2、3曲ならともかくずっとは無理です。少なくとも私は出来ません。

こんな感じで、一歩抜け出そうとすると急に茨の道になります。とてもじゃないけど「誰でも簡単にできるよー」とは言えなくなります。そしてDJと名乗るならば完璧なプレイを目指すべきだろうから、基本的に「アニソンDJは難しい」ということになるんじゃないしょうか。

とりあえずやってみれば

なんにしろやってみないとどう感じるかも自分が求めるレベルがどの程度かも分かりません。

友達にDJがいるなら、安いPCDJ用コントローラを借りてやるだけやってみましょう。いない人は……無料ソフト (VIRTUALDJとか) があるんでPCオンリーで体験してみて下さい。何も考えずに好きな曲を繋いでみて満足であればそれで良し、物足りなければ茨の道です。

体験した後は自由です。いきなり出演できるイベントを探してどんどん人前に出るのもアリでしょう。逆に修行僧みたいにクオリティを追求するのもアリです。(私は完全にこっち……) イベントに出てるうちに「人より上手くなりたい!」と思って修行僧になる可能性もありますし。とりあえず細かいことは考えずに入り口に立ってみましょう!

まとめ

  1. アニソンDJの難易度は難しいとも簡単とも言える
  2. お客さんに求められるハードルは低い
  3. こだわりだすと茨の道
  4. やってみて満足できるかできないかで求めるレベルを判断すべし