ののじのめもも

在宅アニソンDJによる修行録

曲の構成・展開

こんにちは、ののじです。みなさん自然に「この曲のサビが好き」とか「Cメロが印象的」とか言ったりしますよね。今回はそれらの曲を構成する要素やパターンについて考えていきましょう。

構成要素

まず曲を構成する各要素からいきましょう。とは言っても、基本的にはみなさん既にご存知だと思います。ですので、アニソンDJ視点で各要素を見ていきましょう。

イントロ (intro)

曲の始まりの部分を「イントロ」と言います。英語でも「intro」です。基本的にはボーカルは無く楽器のみであることが多いですが、アニソンではボーカルありの場合も多いです。

聞くぶんにはそんなに意識しない部分かもしれませんが、イントロ部分が静かか賑やかか、アウフタクト (いずれ説明します……) が存在するか、ループとして使えるかはアニソンDJからすると重大な事柄です。

アニソンDJでは、ほぼ必ずAメロからサビまで手を加えずそのまま使います。とすると、EQやエフェクトを使用できるのはここと間奏、アウトロくらいになります。アニソンDJ的にはAメロやサビよりもイントロの方が覚えるべき優先度が高いと言っても差し支えないと思います。

Aメロ (verse)

最初に出てくるメロディーの部分を「Aメロ」と言います。英語では「verse」です。ここからボーカルが入ります。

イントロとは対照的に手を加えることはほぼありません。と言うか、アニクラでここに手を加えると不評を買うことの方が多いでしょう。そのため、Aメロに入る前、あるいはその瞬間に完全にMIXを終わらせる必要があります。

Bメロ (pre-chorus)

Aメロに続いて出てくるメロディーの部分を「Bメロ」と言います。英語ではっきりとそれに相当する言葉はありませんが「pre-chorus」でしょうか。ここもAメロに引き続きボーカルが入ります。

Aメロと同様、こちらも手を加えることはありません。ただ場合によってはよりサビを際立たせるため、エフェクトを使用しビルドアップを作ることも稀にあるかもしれません。基本的には触る必要はないため、DJとして重要度の高い要素ではありません。

サビ (chorus)

1番盛り上がるメロディーの部分を「サビ」と言います。Cメロ後のサビは特別に「大サビ」とも「ラスサビ」とも言いますね。英語では「chorus」です。当然ボーカルがあります。

原曲系アニクラでここに手を加えるのは厳禁です。もう1回書きます、厳禁です!大人しく終わるまで待つかお客さんを煽る時間にしましょう。なぜかと言うと、お客さんはある意味ここを楽しみにアニクラに遊びにくるからです。DJがそれを潰すことは許されません。

ここにお客さんの不評を買わずに手を加えられるなら、それはもう相当ハイレベルなプレイです。

間奏 (interlude)

サビ後、2番のAメロ、もしくはCメロまでの部分を「間奏」と言います。英語では「interlude」が適切でしょうか。イントロと同じく基本的にボーカルはありません。ただCメロ前の場合、ギターソロもしくはシンセソロが入ることが非常に多いです。

イントロ同様、アニソンDJ的には非常に重要度が高い要素です。ここの音をどのように使うかによって2曲間のMIXのクオリティが決まります。お気に入りの曲については間奏の拍数やループ可能な部分を事前に覚えてしまうべきです。

Cメロ (bridge)

2番の間奏の後、大サビ前の雰囲気が変わるメロディー部分を「Cメロ」と言います。これも英語では相当する言葉がない気がしますが「bridge」でしょうか。ボーカルが入って、少し抑えめのテンションになることが多いです。

ここはアニソンDJとしてはとても難しい要素です。ですので、始めたばかりの頃は一切使わないと思ってもらっても差し支えないと思います。Cメロは2番サビ後ろにある要素なのでそこまで1曲を使い続けること自体が少ないですからね。

アニソンDJがCメロを使うのは、テクニカルなMIXがある程度できるようになった後の話です。そうでなければ操作を失敗して流し続けてしまったか、何も考えていないかです。

アウトロ (ending)

大サビ後の部分を「アウトロ」と言います。英語では「ending」です。ここも基本的にボーカルはありませんが、アニソンではちょくちょく残ったりします。きっちり終わらずフェードアウトしていく曲もありますね。

Cメロ同様、ここも基本的に使いません。が、Cメロよりは出番があるかもしれません。具体的にどう使うかはまた別記事で説明しますが、基本は間奏と同じです。

間奏と違うのは、アウトロは最後には完全に音がなくなる、というところです。音がなくなるということは、アウトロを丸々使えば操作せずとも次の曲へ移行できることを意味します。ただアウトロと次の曲のイントロの拍数が合うことはほぼありません。そのため使用する場合には間奏と同じように拍数やループ部分を事前に覚えておく必要があります。

要素の2つの決まりごと

さて、ここが特にみなさんに覚えて欲しい部分です。今まで曲を聞くときにそれぞれの要素が何拍 (何小節) で作られているか意識したことはあるでしょうか。聞くだけならそんなことは全く意識しなくていいんですけど、DJをするならがっちり意識してください。そうでないと美しいつなぎは絶対にできません。

長さのパターン

実は各要素はある程度決まった長さで作られています。ある程度というのは、曲によって相当ばらつきがあるからです。とは言っても、それなりのパターンがあります。それは4拍子を前提とするなら「32, 64, 128拍 (8, 16, 32小節)」です。だいたいこの中のどれかです。その他は「4, 8, 16拍 (1, 2, 4小節)」か、2, 4, 8拍が前後に足されている形があります。

ここで試しに何か好きな曲をイントロ, Aメロ, Bメロ, サビとそれぞれ何拍、何小節だったかカウントし記録しながら聞いてみてください。わりと上記のパターンに当てはまったんじゃないでしょうか。

音楽に絶対的な決まりはほとんど無いんですけど、アニソン含む大衆音楽ではほとんどこの形に収まります。1つめの決まりごとと言ってしまっても良いでしょう。

32拍 (8小節)

そしてもう1点確認して欲しいところがあります。もし今聞いてもらった曲のサビが64, 128拍 (16, 32小節) だったら、それは「32拍 (8小節) のフレーズの繰り返し」ではなかったでしょうか。まあまるっきり同じではないでしょうが、似たフレーズが繰り返されませんでしたか。

ほとんどの場合は繰り返しになっていることでしょう。このように大衆音楽では基本的に32拍 (8小節) を1つのパターンとして展開していくのです。32拍 (8小節) ごとに要素が切り替わったり、同じ要素内であっても旋律が変わったりします。これが決まりごとの2つめです。

決まりごとの大切さ

この2つの決まりごとはDJをするに当たって非常に大事です。違和感の無いMIXを行うなら、今の曲の流れている要素が何拍なのか、そして要素内に何拍残っているか、MIXに使う要素は何拍か等々……常に考えなければならないことが山のようにあります。この時の判断材料になるのが2つの決まりごとなのです。

例えばこんな具合です。今流れている曲を曲1、次に流す曲を曲2としますね。

  1. 曲1は再生中。曲1の間奏は16拍。
  2. 曲2は停止中。曲2のイントロは32拍 + 4拍 (4拍の溜めのようなフレーズがある)。
  3. 曲1の間奏が16拍しかなく、ループできるポイントが無いため16拍でMIXを行うことを決定。ビートマッチを行う。
  4. 両曲の要素の拍数を合わせるため、曲2はイントロ頭から16拍進めたところでストップ。
  5. 曲1が間奏に入った瞬間に曲2をスタート。
  6. 16拍分EQ等を駆使しMIXを行う。
  7. 16拍経過し曲1が2番Aメロに入る瞬間までに完全に曲2に切り替える。
  8. 曲2の残りのイントロ4拍 (溜めフレーズ) 以降、曲2を再生。

曲1のように要素の長さが基本的な32拍 (8小節) の半分、16拍 (4小節) しかない曲は非常に多いです。さらに曲2のように要素内でも毛色の違うフレーズが少しだけ足されている場合も多いです。何も知らずに基準がない状態だと何が何やらわからない状態になりますが、「要素の長さには特定のパターンがある」ことと「32拍 (8小節) で1つのフレーズを構成する」ことを知っていると「なぜMIXを16拍にしたのか」や「なぜ曲2のイントロ後ろの4拍をMIXに使わないのか」が理解できるのではないでしょうか。

くどいようですが、この決まりごとは本当に大事です。頭でも体でも分かっていないとビートマッチしたところで綺麗なつなぎにはなりません。とにかく少しでも、曲を聞くときにカウントしてみたりして各要素のパターンと32拍での展開を意識してみて下さい。きっとそれだけでもDJをやりやすくなりますよ。

余談です。ある種の人にはすごく分かりやすくなる事を言います。「オタ芸は基本8小節、長いやつは16小節」です。以上です。

代表的な構成

では次は代表的な曲の構成をいくつか挙げてみましょう。

  • イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Aメロ→Bメロ→サビ→アウトロ
  • イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Cメロ→サビ→アウトロ
  • サビ→間奏→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Cメロ→サビ→アウトロ

まだまだあるんですけど、分かりやすいのはこのあたりでしょうか。特に2つめはアニソンにおける定番中の定番展開です。カラオケに行って見た事のあるアニメのOPを歌うと「Cメロ知らない!」ってなる事、ありませんか。その曲の構成ってだいたいこれです。

3つめもアニソンは多めな気がします。サビから入って短めの間奏を挟んでAメロというパターンです。ClariSの「コネクト」みたいにサビのうちの8小節だけを最初に使うパターンもよくありますね。

とにかくアニソンは要素をフル活用する傾向があります。1つめのようにシンプルな構成の曲はあまり多くありません。曲中でドラマチックに大きく展開が変わる曲が多いのが特徴ですね。

まとめ

  1. DJにもっとも大事な曲の要素は「イントロ」と「間奏」
  2. 各要素の長さには特定のパターンがある
  3. 基本的に32拍 (8小節) で1つのフレーズを構成する
  4. アニソンは要素をフル活用したドラマティックな展開の曲が多い